夏は紫外線の影響で、冬は寒さと乾燥で、一年中肌荒れに悩まされている敏感肌の方も多いことと思います。肌荒れをなくすためには洗いすぎないことと保湿ケアが大切、それはわかっていますが、ほかにも大切なことがあるのをご存知でしょうか。実は肌荒れと食べ物の間には深い関係があるのです。
なぜ食べ物でお肌の状態が左右されるのか、食べてはいけない食べ物とはなにか。積極的に摂りたい栄養素にはどんなものがあるのか?敏感肌のあなたのために、おすすめのレシピも交えながら紹介してまいりたいと思います。
たんぱく質とコラーゲンの違いとは
私たちのからだは、70%が水分、20%がたんぱく質でできています。たんぱく質はアミノ酸がたくさん集まった集合体で、私たちの肉体や内臓をかたちづくる以外にもいろいろな役割のたんぱく質があります。たとえばホルモンや酵素など代謝にかかわるたんぱく質もあれば、コレステロールを運ぶリポたんぱくのような輸送たんぱく質もあります。
たんぱく質の中でもっとも多いのが構造たんぱく質というもので、私たちの肉体や内臓を形成しており、その代表的なものがコラーゲンです。骨=カルシウムという印象がありますが、実は骨はコラーゲンにカルシウムが沈着したものであり、骨の中心部はコラーゲンでできているのです。
皮膚にあるコラーゲンは体内で作られるたんぱく質
だから、骨粗しょう症にならないようにするにはカルシウムだけでなく、コラーゲンを作るためのたんぱく質も十分に摂る必要があるります。
体内のたんぱく質のおよそ30%を占めるコラーゲンの特徴は、繊維状のそのかたちでしょう。コラーゲンはまるでより糸のようにねじれており、これがたくさん集まったものはコラーゲン繊維と呼ばれています。皮膚のコラーゲン繊維は皮膚の真皮にあって線維芽細胞のすき間をびっしりと埋めている細胞間物質の中心的役割を果たしています。
細胞のすき間を埋めているコラーゲンなどは細胞外マトリクスとよばれていますが、これがあるおかげで私たちの肌は弾力を保つことができるのです。私たちの皮膚にあるコラーゲンは体内で作られるたんぱく質であり、食品のコラーゲンとは全く別のもので、食べ物から直接補うことはできません。
コラーゲンは年齢とともに弾力を失い、体内での産生量も減少していきます。では、どうすればコラーゲンを増やすことができるのでしょうか。
食品の中にはコラーゲンをたくさん含むものが多くあります。たとえば動物の軟骨や骨、にわとりのとさか、すじ肉などにはコラーゲンが多く含まれています。しかし、食べ物から摂取したコラーゲンが皮膚に良質なコラーゲンを増やすことにつながるのか、専門家の間でも意見がわかれるところです。
コラーゲンなどのたんぱく質はアミノ酸の集合体ですが、集まるアミノ酸の量によって大きさがかわります。いちばん小さい状態がひとつのアミノ酸、ふたつ以上のアミノ酸が集まったものはペプチド、ペプチドがいくつか集まるとポリペプチド、そしていちばん大きいものがたんぱく質です。
食べ物から摂取したたんぱく質は、酵素や消化液によって小さくされないと吸収することができません。せっかくのコラーゲンもバラバラにされてアミノ酸に戻ってしまうのです。ところが、食べ物からのコラーゲンの摂取を増やすと、皮膚でのコラーゲン量が増えるという研究結果がいくつもあります。
なぜ食べ物からのコラーゲン供給で皮膚のコラーゲンが増えるのか、そのメカニズムは明らかにされていませんが、一部のコラーゲンがペプチドのまま吸収されて、コラーゲンを生成する繊維芽細胞を刺激するためではないか、と推測されています。
コラーゲン摂取後の4週間後の肌の状態の実験
学術的に正しい研究とはいえませんが、面白い実験結果があります。
双子の女性歌手ザ・リリーズのふたりが、コラーゲン5,000㎎を毎日摂取し、4週間後の肌の状態をチェックするというものです。
- 姉の燕奈緒美さんは1週間おきの摂取
- 妹の真由美さんは4週間継続して摂取
どちらも肌の状態は向上しましたので、食品として摂取したコラーゲンが皮膚のコラーゲン量をを増やしたと考えられます。しかも、不思議なことに1週間おきにコラーゲンを摂取した姉の奈緒美さんのほうが、肌への効果がより高かったのです。
番組では、経口で摂取したコラーゲンが繊維芽細胞を刺激することが理由としていますが、毎日続けるより間隔をあけたほうが刺激に対する感受性が持続すると考えられます。
もちろん、テレビ番組ですから頭ごなしに信じるわけにはいきませんが、実験結果としては非常に興味深いものがありますね。番組ではコラーゲンのサプリメントを使用していましたが、ここではコラーゲンをおいしく摂れるレシピを紹介しましょう。
コラーゲンは1日に5g~10g程度を継続して摂るのが効果的といわれています。毎日食べるには工夫が必要ですが、使えそうな食材は意外と多いもの。
これらの食品の中から、リーズナブルでお手軽な牛スジ肉と鶏手羽元を使ったカレーをクックパッドからチョイスしてみました。これならおいしくコラーゲンがとれそうですね
多価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸
たんぱく質と並んでお肌にとって重要なのが脂質。皮膚の表面は基底層で生まれた角化細胞がどんどん皮膚の表面へと上って行って最終的に角質(垢)となって剥がれ落ちていきます。これがいわゆるターンオーバーですが、角層で角化細胞の間を埋めているのが、角質細胞間脂質というもので、セラミドやコレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。
角質細胞間脂質は角質細胞による層構成を安定させて肌の保湿に重要な役割を果たしています。また、基底層で生まれる細胞を覆う細胞膜もリン脂質という脂質でできています。リン脂質を構成するのは脂肪酸、グリセロール、リン酸などですが、リン脂質に含まれる脂肪酸の種類によって、細胞膜の流動性は影響を受けます。
細胞同士は周囲の細胞と細胞膜によってくっついていますが、細胞膜の流動性が高いほど接着力は強くなります。そして細胞膜の流動性を高めてくれる脂肪酸が、多価不飽和脂肪酸といわれるもので、n-3系(オメガ3)、n-6系(オメガ6)脂肪酸と呼ばれています。
n-3系脂肪酸で代表的なものが、αリノレン酸と、αリノレン酸から合成されるDHAやEPAです。n-3系の脂肪酸は細胞膜の流動性を高めて細胞同士の接合を強固なものにしてくれます。
一方、n-6系の脂肪酸はリノール酸を原料とするγリノレン酸やアラキドン酸です。n-6系も生体にとって重要な脂肪酸ですが、アレルギー症状を起こす物質の原料ともなるため、摂りすぎは厳禁です。現代人はリノール酸の摂りすぎといわれ、これがアレルギーの増加につながっているとする研究者もいます。
また、動物性脂肪に多い常温で固体化する飽和脂肪酸は細胞膜の流動性を低下させ、皮膚組織の柔軟性やキメの細かさに影響を与えると考えられます。さらに、加工された脂肪に存在するトランス脂肪酸は酸化されやすく、アトピー性皮膚炎の原因物質になると考えられています。
トランス脂肪酸はマーガリンや揚げ物に使われるショートニングなど、植物性油脂に水素を添加してペースト状にしたものに多く含まれています。トランス脂肪酸を多く含む揚げ物やお菓子、加工食品などはお肌にとって大敵といえるでしょう。
トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、メタボリックシンドロームや脂質異常症、心臓病、高血圧などの生活習慣病を起こすとして、WHO(世界保健機関)によって摂取上減量が設けられ、アメリカの食品医薬品局(FDA)はトランス脂肪酸を含む油脂の食品への使用を禁止しました。
日本では規制が行われていないので、菓子パンやポテトフライ、ファストフード好きな人は摂りすぎに注意したいものです。
ビタミンの種類とその役割は
お肌に良いコラーゲンや多価不飽和脂肪酸を十分にとっても、新陳代謝に不可欠なビタミンやミネラルが不足してはお肌の状態は改善しません。まず、お肌に良いビタミンとその働きを簡単に解説しましょう。
ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)
ビタミンB群はぜんぶのB群ビタミンが協調して働くため、どれか1種類だけ摂るのではなくまんべんなく摂る必要があります。皮膚に関連する代表的なB群ビタミンについて解説します。
- ビタミンB1
糖質をエネルギーに変えるエネルギー代謝に必要なビタミンで、不足すると疲労がとれにくくなります。また、糖質の代謝がうまくいかなくなるので、後で述べる細胞の糖化によって皮膚の老化を早めます。 - ビタミンB2
脂質の代謝を促進し、皮膚や髪、爪などを健康に発育させるために不可欠です。脂質の摂取が多い人ほど不足しがちなビタミンです。 - ビタミンB6
たんぱく質の代謝に必要で、新陳代謝を促進します。また、免疫機構を正常に保つにも必要とされるビタミンで、不足すると皮膚炎や脂性、アレルギー症状などを起こしやすくなります。 - ビタミンB12
葉酸:血液の赤血球、ヘモグロビンを作るのに働きます。貧血は末梢組織の栄養不足を招き、皮膚の新陳代謝を低下させます。 - ナイアシン
脂質、糖質、たんぱく質の代謝に不可欠で、不足するとペラグラという皮膚病を起こします。皮膚の健康になくてはならないビタミンです。 - パントテン酸
副腎の働きを高めて善玉コレステロールを増やします。欠乏すると免疫力が低下して風邪をひきやすくなります。 - ビオチン
皮膚炎を予防することで知られる、新陳代謝やエネルギー代謝に不可欠なビタミン。不足すると湿疹ができたり、抜け毛や白髪が増えてしまいます。
ビタミンエース(ビタミンA、C、E)
ビタミンA、C、Eはすべて抗酸化ビタミンで、美容に関するビタミンのエースとして知られています。
- ビタミンA
皮膚や粘膜を健康に保つために知られるビタミンで、体内でビタミンAに変換されるβカロテンなどカロテノイドもビタミンAを同じ働きを持ちます。不足すると皮膚や粘膜が乾燥しやすくなります。 - ビタミンC
コラーゲンの生成に不可欠で、不足すると皮膚だけでなく血管や内臓などにも悪影響を与え、出血傾向を強めたり病気にかかりやすくなります。免疫機構にも深くかかわっており、不足すると免疫力が低下します。 - ビタミンE
脂溶性の抗酸化ビタミンで、細胞が活性酸素に傷つけられるのを防ぎます。水溶性の抗酸化ビタミンであるビタミンCと相互に働き、一緒にあると相乗効果を高めます。
糖質の摂りすぎは禁物!糖化とメイラード反応
内閣府の食品安全委員会が食品中に含まれるアクリルアミドについて、「遺伝毒性のある発がん物質」とする発表を行いました。アクリルアミドとはアミノ酸の一種であるアスパラギンと炭水化物などの糖類が反応してできる物質で、ポテトチップスやフライドポテトに多く含まれるとして反響を集めました。
しかし、アクリルアミドを含む食品を食べたとしても、すぐに直接的な影響を及ぼすかどうかはわかっていません。アクリルアミドが生成される過程をメイラード反応、あるいは糖化反応といいますが、実は体内でも糖化反応が起こっており、さまざまな疾患の原因となっていることが明らかになり始めています。
体内での糖化反応とは、食事から吸収されたグルコースなどの糖が体内のたんぱく質や脂質に結合することで起こります。糖の結合した糖化物は通常の細胞の2倍もの寿命を持ち、体内に居座り続けます。
特にコラーゲンなど体内に長く存在するたんぱく質が糖化されると、からだの老化を早めて肌の弾力を失わせ、ハリのないしなびたような肌になってしまいます。また、骨はもろくなり骨折しやすくなり、脳ではアルツハイマー病の原因ともなります。
この糖化反応で生成される褐色の色素はAGEs(エージーイー)と呼ばれ、シミの原因となります。体内の糖化現象を防ぐためには炭水化物や糖類の摂りすぎを控えて、食事は野菜から食べるなど血糖値を上げすぎない工夫が必要です。コラーゲンの糖化を防ぐにはドクダミ茶やシソ茶などを、糖化全般を防ぐにはカモミールや食用菊がよいといわれています。
※AGEs(Advanced Glycation Endproducts) 最終糖化産物と呼ばれ、糖とタンパク質が結びつくことで体内に生成される老化物質のこと。
まとめ
肌荒れを防ぐのも起こりやすくするのも食事の内容や栄養素の摂り方次第です。また、肌の健康によい食品は全身の健康にも寄与します。肌もからだの一部ですから、体全体の健康を維持し、老化を防ぐことが健康で美しい肌への第一歩なのです。これからはスキンケアや紫外線ケアと同じように、食事による肌と全身の健康ケアを心がけましょう。