元ラグビー日本代表で神戸親和女子大学の講師を務める平尾剛さんは「深層筋を鍛えれば、表面にある大きな筋肉を使わなくても肉体を自在に動かすことができる。なかでも深層筋である大腰筋を活性化すれば腰痛や肥満の改善にも役立つといわれている。」と話していました。
大学やリハビリテーション病院などの研究でも、深層筋は表層筋の負担を軽減し、身体全体のバランスと動きをコントロールしていることが示唆されており、深層筋を鍛えることが健康を維持するために重要だとしています。
深層筋、つまりインナーマッスルは表面の筋肉よりもさらに体の奥、骨格に近い部分に存在する筋肉で、その動きを自分で自覚することはあまりありません。しかし、ポッコリお腹のメタボ体型を改善するには、腹筋をするよりもインナーマッスルを鍛えるほうがより効果的なのです。インナーマッスルを活性化して、スリムな細マッチョを目指してみませんか?
メタボ体型を改善 【目覚めよ~!深層筋!!】
インナーマッスルの中でも特に重要な大腰筋と腹横筋を活性化させるストレッチをご紹介しましょう。
❤大腰筋を活性化するストレッチ
- 仰向けで手は骨盤にあてます。
- 手で骨盤の動きを確かめながら、片方の腰骨を頭側に引き上げます。
- 反対側の骨盤を引き上げます。このとき下げる方の腰骨にあてた手に少し力を込めて骨盤の動きを補助します。
ストレッチ中は腹筋に力が入らないように注意してください。 - 大腰筋を意識することが大切です。左右20回ずつ、合計40回行いましょう。
腹横筋は腹腔の内圧を高めて内臓の働きを活性化してくれるとともに、横隔膜を押し上げて体幹を安定させる働きがあります。腹横筋が活性化すると、バランス感覚がよくなり正しい姿勢を取りやすくなります。
❤❤腹横筋を活性化するストレッチ
- 手と膝をついて四つん這いになります。
- 背中は反らさないでアーチのように丸めます。
- 姿勢をキープしたまま、おなかの力をぬいてゆるめます。
- ゆっくりとおなかを引き上げます。
- これを5~10回繰り返します。1日に2セットくらい行うと効果的です。
エクササイズではありませんが、腹横筋を刺激して活性化するのに最適な方法があります。それはゴム風船。以前、「風船ダイエット」として流行したこともあるこの方法は、顔の筋肉を引き締め小顔効果もある優れものです。
やり方はいたってかんたん、ゴム風船をふくらませるだけ。1日に30回くらいふくらませると腹横筋を活性化し、ウエストが引き締まってきます。後で説明するドローインをやりながらふくらませると一層効果的です。
ドローイン
ドローイン(drawing-in)とは、引き入れるという意味ですが、文字通りおなかを背中側に引き込む動作を行います。ドローインを続けると、腹横筋が活性化して呼吸を正すとともに、体幹のバランスを良くして姿勢を矯正してくれます。ポッコリお腹をへこませるための最短エクササイズでもあります。
立って行ってもよいのですが、初めのうちは仰向けに寝て行うとやりやすいでしょう。
やり方はいたってかんたん、ゆっくりと深呼吸をしながら息を吐くときに、思い切りおなかを背中側に引き寄せるだけです。おへそを背骨にくっつけるようなつもりで行うとよいでしょう。
ダイアゴナルバランス
ダイアゴナルバランスは体全体をつかってバランスをとるエクササイズで、全身のインナーマッスルを鍛えることができるキング・オブ・インナーマッスル・トレーニングです。
- 両手両膝をついて四つん這いになります。
- 片方の手をまっすぐ前に伸ばし、同時に伸ばした手と反対側の脚を後方にまっすぐ伸ばします。
- この姿勢のまま5秒間静止します。反対側も同じように1~2回行います。慣れてきたら回数を増やしたり、静止する時間を延ばしてみましょう。
この体制でバランスをとるのは意外と難しく、最初のうちはぐらぐらしたりふらついたりするかもしれませんが、続けているうちに安定感が増してきます。慣れてきたらひざをつかず腕立て伏せの姿勢から行うようにすると効果が増します。
素朴な疑問、インナーマッスルとは?
私たちが体を動かせるのは骨格と、骨格を支える筋肉のおかげです。
たとえば、ひじを曲げるという動作は、上腕二頭筋が収縮して前腕を引き寄せる動きです。逆に腕を伸ばすときは、反対側にある上腕三頭筋が収縮してひじを伸ばします。
筋肉は縮むときにしか力を出せないので、四肢の曲げ伸ばしをする骨格筋は必ず二組が対になっています。曲げる側についている筋肉を屈筋、伸ばす側の筋肉を伸筋といいます。人のからだは曲げたり伸ばしたりだけではなく、ひねる動き、回転する動きも必要です。
からだの表面にある表層筋は直線的で大きな力を生み出すためのもので、細かな動きやなめらかな動作を生み出すのが深層筋の役割です。深層筋をインナーマッスルと呼ぶのに対し、表層筋をアウターマッスルと呼ぶこともあります。
特に胴体部分のインナーマッスルは重要で、おなかの下部にある骨盤底筋群が内臓の入った腹腔を下から支え、腹横筋、内腹斜筋、多裂筋が腹腔の周りを覆っています。これらのインナーマッスルが腹腔内の圧力を高め、横隔膜を押し上げることで体幹をまっすぐに支えているのです。
インナーマッスルの役割
筋肉といえば、誰しもボディビルダーの鍛え上げられた見事な肉体を思い浮かべることでしょう。あのたくましい肉体はウエイトトレーニングによって得ることができます。しかし、アウターマッスルを鍛えれば鍛えるほど、インナーマッスルは働かなくなってしまいます。
なぜなら、肉体を動かすときにまずアウターマッスルを使うようになってしまうからです。しかし、実はなめらかな動作をするための基本はインナーマッスルにあるのです。インナーマッスルを使った動きこそ無理のない合理的な動きなのです。
アウターマッスルだけに頼った動きはぎこちなく、力の働き方に無理が生じます。ウエイトトレーニング中心にトレーニングをしている運動選手にケガが多いのは、インナーマッスルが働いていないせいで肉体が自らの動きについてこられないからです。アウターマッスルの力が大きければ大きいほど、身体にかかる負担は大きくなり、故障の原因となってしまうのです。
また、スポーツ選手は年齢を重ねるほどケガが多くなるものですが、これはアウターマッスルが衰えてくるために、これまで強じんなアウターマッスルに支えられていた負荷が支えきれなくなるためです。年齢を重ねてもパフォーマンスの衰えない大リーグのイチロー選手や、サッカーの三浦カズ選手などはインナーマッスルと体幹のトレーニングを欠かしません。
「足腰を鍛える」の本当の意味
インナーマッスルの中でも特に重要な筋肉が腸腰筋です。腸腰筋は大腰筋と腸骨筋、ふたつの総称ですが、人体の中でもかなり大きな筋肉で、脚を動かすときや身体全体を支えたり、前屈するときに働く筋肉です。
大腰筋は背骨と脚を結んで引っ張り上げる筋肉ですから、大腰筋が衰えると足を上げにくくなります。階段や少しの段差でつまづくことが多い場合は大腰筋が衰えている可能性があります。
腸骨筋は骨盤と脚とを結んでおり、重力に拮抗してからだ全体を安定させるのに重要な筋肉です。腸骨筋が衰えるとからだは安定性を失いふらつくようになります。お年寄りの腰が曲がり、歩幅がせまく、すり足で歩くようになるのは、腸腰筋の衰えにより、体が支えられなくなり、足がうまく上がらなくなるからです。
筋電計で計測を行うと、足を上げるなど下肢の動作を行う際にインナーマッスルの活動が高まることが判ります。また、腸腰筋などインナーマッスルの筋活動が高まると腹直筋や脊柱起立筋などアウターマッスルの筋活動が低下します。インナーマッスルがきちんと働けばアウターマッスルの負担は大きく軽減されるのです。
昔からスポーツや武道の基本は足腰にあり、「足腰を鍛える」ことが基礎になるといわれてきました。足と腰は直接つながっていて、腰、つまり体幹がしっかりしていないと下肢をうまくうごかすことができない。だから「足腰を鍛える」の本当の意味は「インナーマッスルを鍛えること」なのです。
まとめ
インナーマッスルは人間のからだをコントロールするとても大切な筋肉です。動きだけでなく、内臓や全身の血流にもよい影響を与えてくれるでしょう。人間は足腰から弱る、といわれていますが、体幹部のインナーマッスルは文字通り肝心要といえます。
インナーマッスルを鍛えるトレーニングは、ポッコリお腹を引きしめてダイエットに最適なだけじゃなく、メタボや生活習慣病、将来のロコモティブシンドローム予防にもなります。筋肉は使わないとどんどん衰えていきますので、さっそく今日からインナーマッスルのトレーニングをスタートしましょう。